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■ある2010年の年の瀬■
「綾小路、面白いのが出てきたよ」
「面白いの?」
いいから早く手を動かせ、と言いたかったが、手招きする風間を見て、綾小路は小さくため息をついてから両手に抱えた古紙を床に下ろした。
「何だ、卒業アルバムか」
そこにあるのは修学旅行の写真だろうか、風間が笑っている。
「若いな」
「君もね。でも君ってこういうの1人暮らしでもちゃんと持ってるんだねえ。…あれ」
まるで人の物だという意識がないように荒っぽく捲られる。
「もっと丁寧に扱えよ」
「君さ、あいつの事が嫌いだったのは解るけど、全部消すのはないんじゃない?」
「消す?……ああ」
誰の事かと思ったが、風間が指さしているのがクラスの集合写真で、やっと合点がいった。
「大川なら、誰のアルバムのも消えてるぞ」
「そんな、全員分消したって言うのかい?嫌悪通り越してへんた」
「悪魔だから、消滅した途端にそれまでの写真全部から消えた。…勿論、皆の記憶からもな」
「……なんだ、つまらないな」
「いいからさっさと掃除に戻れ。ただでさえお前が持ち込んだガラクタは多いんだから…って」
ぱたん、とアルバムを閉まったは良いが、今度は人の悪い笑顔を浮かべて近づいてきた。こういう悪だくみのような、性根の悪い顔というのは昔から変わらない。
「じゃ、何で僕ら覚えてるんだい」
まるでトリックでも見破ったかのような口ぶりだ。しょうがないから乗ってやる。
「…お前の持ち込んだ書の所為で俺があんな目に遭ったんだ。忘れられちゃ困る」
「……人の記憶まで操作できるって言いたそうだね、君」
「――だったらどうする?」
風間はゆっくりと近づいて、おもむろに綾小路のマスクを下ろす。埃の匂いよりも先に来るのは風間の匂いだ。顔が近づく。
「…相変わらず、飽きないねぇ」
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